美術館の歴史と設立
天心記念五浦美術館は、岡倉天心や横山大観をはじめとする五浦ゆかりの作家たちの業績を顕彰し、優れた作品を鑑賞することを目的に設立されました。北茨城市の五浦は、明治39年に日本美術院第一部(絵画)が移転し、岡倉天心や五浦の作家たちが活躍した歴史的な地です。美術館では、天心や五浦の作家たちに関する様々な資料を所蔵、研究しており、「岡倉天心記念室」でそれらを紹介しています。
建築設計
美術館の建築設計は、美術館、博物館、駅舎など数多くの公共施設の設計で知られる内藤廣によるものです。そのデザインは、五浦海岸の美しい景観と調和し、訪れる人々に深い印象を与えます。
展示内容と施設
茨城県天心記念五浦美術館では、近現代の日本画を中心とした企画展を随時開催しています。展望ロビーやカフェテリアからは、大小の入江と美しい松林が見事な景観をつくりだす五浦海岸の眺望も楽しむことができます。
岡倉天心記念室
岡倉天心記念室では、近代日本美術の発展に貢献した岡倉天心の生涯を、書簡や遺品などを通して紹介しています。また、横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山ら五浦ゆかりの作家たちの作品も展示されています。
常設展示
常設展示では、岡倉天心の生涯を書簡や遺品を通して紹介し、近代日本画の発展に尽くした彼の功績を伝えています。天心の業績を後世に伝えるため、多くの貴重な資料が展示されています。
テーマ展示
テーマ展示では、特定のテーマに基づき天心や五浦の作家たちの業績を紹介しています。また、新収蔵資料の展示も行われ、訪れる人々に新たな発見を提供しています。
施設の詳細
展示室
美術館にはA、B、Cの3つの展示室があり、近現代の日本画を中心とした企画展が開催されます。A展示室のみでの企画展開催中には、B、C展示室は一般の方の作品発表の場として利用できます(ギャラリー展)。
映像ギャラリー
映像ギャラリーでは、美術館の情報や「天心のこころ」などの映像番組を視聴できます。4つのブースがあり、非接触操作パネルを導入しており、指を近づけるだけで操作することができます。
講堂
講堂には114席の客席と200インチの大型スクリーンが備えられており、美術に関する講演会や名画の上映会などが開催されます。
美術情報ライブラリー
美術情報ライブラリーでは、岡倉天心に関する資料や美術関連図書の閲覧が可能です。キッズ向けの絵本やDVDも用意されています。
展望ロビー
展望ロビーは、観覧後の休憩に最適なスポットで、太平洋を一望できる絶景が楽しめます。
カフェテリア
美術館内にはカフェテリア「カメリア」があり、展覧会の後にお茶や食事を楽しむことができます。
ミュージアムショップ
ミュージアムショップでは「和」をテーマにしたオリジナル商品や贈り物に最適な商品が揃っています。
岡倉天心について
岡倉天心(1863-1913)は、日本の伝統美術の優れた価値を認め、美術行政家、美術運動家として近代日本美術の発展に大きな功績を残しました。彼の活動には、日本画改革運動や古美術品の保存、東京美術学校の創立、ボストン美術館中国・日本美術部長就任などがあります。天心は自筆の英文著作『The Book of Tea(茶の本)』を通して、東洋や日本の美術・文化を欧米に紹介しました。
五浦での生活
岡倉天心は、晩年に太平洋を臨む人里離れた五浦に居を構えました。彼はここで、横山大観ら五浦の作家達を指導し、新しい日本画の創造を目指しました。天心は五浦を本拠地として生活し、日々釣りや読書を楽しむ一方、六角堂で思索を重ねました。
古美術の保存と保護
天心は、明治時代の廃仏毀釈により破壊される美術品の保存に尽力しました。彼の文化財保護に対する情熱は、古社寺保存法の制定に反映され、その精神は昭和4年(1929)の「国宝保存法」、昭和25年(1950)の「文化財保護法」に受け継がれています。
新しい日本画の創造
天心は東京美術学校で、近代的な学校教育制度を導入し、新しい日本画の創造を目指しました。彼の指導のもとで生まれた作品は、近代日本画史に残る名作として高く評価されています。
美術館の沿革
茨城県天心記念五浦美術館は、1997年に開館しました。岡倉天心の業績を記念し、近代日本美術史で重要な拠点となった五浦海岸に設立されました。
設立と活動
美術館は、岡倉天心や五浦の作家たちの作品を展示し、美術教育や市民活動の拠点としても機能しています。また、水戸市の 茨城県近代美術館、笠間市の茨城県陶芸美術館と連携し、共通の年間パスポートや入場料の相互割引を実施しています。
近年の改修
令和元年(2019年)には展示室の空調不具合により企画展の開催を中断し、令和2年(2020年)には改修工事のため全館休館しました。その後、令和3年(2021年)4月24日に全館で再開しました。
アクセス
北茨城市は、水戸から約70km、東京から約160km、福島県との県境に位置しています。五浦海岸の大小の入江と美しい松林は「日本の渚100選」に選ばれ、海岸の波音は「日本の音風景100選」に選ばれています。