神社の概要
荘厳な雰囲気と自然の美しさ
御岩神社は茨城百景のひとつとして知られ、背の高い木々が空を覆い隠すほど立ち並び、その荘厳な雰囲気にまず圧倒されます。鳥居から一歩足を踏み入れると空気が変わるのを感じることができ、その先に進むと御神木である三本杉が見えてきます。この三本杉は林野庁の「森の巨人たち100選」にも選ばれ、日立市一の大きさを誇ります。地面から約3メートルの地点で三つの幹に分かれるその姿は非常に印象的で、生命力の象徴とも言える力強さを感じさせます。
御岩神社の社殿と祀られている神々
楼門をくぐり奥へ進むと、御岩神社の社殿がその威厳を持って佇んでいます。ここには国常立尊、伊邪那美命、大國主命など、計26柱が祀られています。また、御岩山全体では188柱の神々が祀られており、その壮大な信仰の範囲を感じることができます。
歴史
御岩神社の創建時期は不詳ですが、『常陸国風土記』には「かびれの峰に天つ神鎮まる」との記述があり、古代から信仰の地であったことが窺えます。縄文時代晩期の祭祀遺跡も発掘されており、古代からの信仰の歴史が確認されています。
江戸時代には、水戸藩初代藩主・徳川頼房が出羽三山を勧請し、御岩山を水戸藩の国峰と定めました。歴代藩主は参拝を常例とし、第2代藩主・光圀により御岩大権現と改められました。しかし、第9代藩主・斉昭は神仏分離を行い、御岩神社を唯一神道に改めました。明治期の廃仏毀釈により大日堂や仁王門などが取り壊されましたが、現在でも仏像が祭られており、神仏習合の色が色濃く残っています。
境内
御岩山の神域
御岩山西側の斜面一帯が神域となっており、社殿が点在しています。拝殿からは表参道と裏参道に分かれており、かびれ神宮の先で合流し、御岩山山頂まで続いています。
かびれ神宮
表参道の奥宮で、天照大神、邇邇藝命、立速日男命が祀られています。社殿前には「今上石」と呼ばれる巨石があり、この岩の奥から湧き出た水が「御多満里の池」となっています。徳川光圀が『大日本史』を編纂する際、この池の水で筆染めの儀を行ったとされています。
斎神社
天御中主神、高皇産霊神、神皇産霊神、八衢比古神、八衢比賣神を祀っています。また、茨城県指定有形文化財の大日如来像や日立市指定文化財の阿弥陀如来像も祭られている、神仏習合の社です。天井画の雲龍図は、2016年秋に行われた茨城県北芸術祭の出品作として岡村美紀が描いたものです。
薩都神社中宮
裏参道の奥宮で、常陸太田市里野宮町の薩都神社の奥宮です。立速日男命を祀り、『常陸国風土記』や『百家系図稿』に記載が見られます。別名を速経和気命といい、雷神と考えられています。薩都神社の社格は延喜式内社、郷社です。
楼門(大仁王門)
明治の廃仏毀釈で取り壊されましたが、近年再建されました。阿吽の仁王像が安置されているほか、霊場図が展示されています。
御神木・三本杉
三本杉は、幹周囲9メートル、高さ50メートル、推定樹齢600年の巨木です。地面から約3メートルの地点で幹が三つに分かれています。この杉は茨城県指定天然記念物であり、林野庁の「森の巨人たち100選」にも選ばれています。日立一の大きさを誇り、その壮大な姿は圧巻です。
自然の美しさ
水芭蕉
3月中旬から4月初旬にかけて、水芭蕉が咲き誇ります。
石楠花
4月中旬から5月初旬には、石楠花が見頃を迎えます。
御岩山
御岩山は戦前の茨城四十五景、戦後の茨城百景の一つとしても知られています。海抜492メートルの高さを持ち、奇岩怪石が立ち並ぶその風景は訪れる人々を驚かせます。古代から信仰の山として崇められ、祭祀遺跡が発掘されています。中世からは修験の山としても栄え、多くの信仰者が登拝しました。頂上からは太平洋や那須連山を一望でき、現在はハイキングコースとしても人気があります。
祭事
御岩神社では年間を通じて様々な祭事が行われています。
- 元旦祭、新年祈祷祭(1月)
- 節分祭、かびれ神宮祭、祈年祭(2月)
- 春期回向祭、例祭(4月)
- 薩都神社例祭(5月)
- 中元祖霊祭盆供養(8月)
- 秋期回向祭(10月)
- 七五三詣祭、新嘗献穀祭(11月)
- 月次祭、月祓(毎月1日)
回向祭は春と秋の年2回行われ、宗教宗派を超えた鎮魂の祭礼です。これは神仏混合の御岩神社特有の祭事であり、多くの参拝者が訪れます。