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穂積家住宅

(ほづみけ じゅうたく)

時を超えて語り継がれる豪農の暮らし

茨城県高萩市にある穂積家住宅は、江戸時代中期の豪農の屋敷として、その当時の暮らしや文化を今に伝える貴重な建物です。主屋、長屋門、前蔵、衣装蔵、庭園から構成されています。

茅葺屋根の重厚な主屋は安永2年(1773年)に建立され、寄棟造りに一部入母屋造りを取り入れた重厚な茅葺屋根が特徴です。敷地内には約100坪の回遊式庭園があり、池には石造りの太鼓橋が架けられた優雅な日本庭園が広がっています。

歴史的な価値

この建物は、当時の水戸藩の郷士制度の実態を知るための重要な歴史的価値を持っています。建築様式のみならず、地方の歴史を理解する上でも大切な役割を果たしています。

古民家の庭園とヤマザクラ

穂積家住宅は江戸時代に建てられた豪農の住宅で、主屋は今年で築250年を迎えます。茅葺屋根の主屋や長屋門などは茨城県指定文化財であり、庭園は高萩市の史跡に指定されています。土間や座敷、美しい日本庭園などは自由に見学することができます。

豪農の多角経営

穂積家は江戸時代中期に庄屋を務め、農業のほか造林業、金融業、酒造業などを営んでいました。明治初期には製紙工場も経営し、多角経営を行っていた上層階級の農家でした。敷地面積は5492.82平方メートルあり、周囲を塀で囲み、中心に主屋、北側に衣装蔵、東側に庭園、南側に長屋門と前蔵を配置しています。

無料公開と利用

現在、穂積家住宅は無料公開されており、期間限定で古民家カフェや映画・テレビのロケ地としても利用されています。

建築様式と構造

主屋

主屋は、桁行12間半、梁間6間の広さを持つ建物で、南西部に曲がり部を突出させ、西端にも突出部を設けています。北面には、後の改修で付け加えられた下屋があり、背面の衣装蔵とは渡り廊下でつながっています。

屋根の形状と特徴

屋根の形状は、正面側に小さな妻を作って入母屋造としているほかは寄棟造となっており、軒付けは数段重ねで葺かれています。この屋根の造りは「五段茅葺中竹節揃角市松模様寄棟造」と呼ばれ、その重厚な外観が特徴です。

長屋門

長屋門は、現在のものは「穂積家屋敷絵図屏風」に描かれた旧状とは異なり、昭和初期の改修でもともと平屋根だったものに2階部分を加えるなど、数回の改築が行われています。城郭に見られる楼門のような外観は非常に珍しく、貴重な建物となっています。

前蔵

前蔵は、嘉永2年(1849年)に建築された切妻造の2階建て土蔵です。大きさは桁行4間、梁間3間で、屋根は漆喰を塗り固めた上に合掌を置き桟瓦葺の屋根を乗せる置屋根形式になっています。美しいなまこ壁が時代的な特徴を良く表しています。

衣裳蔵

衣装蔵は、大正4年に造られた切妻造の土蔵で、主屋の背面から渡り廊下でつながっています。いわゆる内蔵の形式で、大きさは桁行3間半、梁間2間半の2階建てです。1階には衣装棚、2階には10畳間を設けた床の間もあり、衣装替えのほか接客にも使用できるようになっています。

庭園

庭園は江戸時代に作られたもので、屋敷の北を流れている関根川から水を引いています。中央西には石造りの太鼓橋が架かり、その先には石灯籠が配置されています。この庭園は、日本庭園の美しい景観を作り出しており、訪れる人々を魅了します。

屋敷絵図屏風

屋敷絵図屏風は和紙に比較的薄い彩色で、江戸時代末期の屋敷全景が鳥瞰的に描かれています(137cm×218cm)。主屋については、ほぼ現在の形となっていますが、長屋門は増築前の形状を残しています。また、庭園に接した二階建ての書院や主屋わきの水車や酒蔵など、今では見られない建物や構造物を見ることができます。

穂積家の保存と活用

穂積家は、茅葺屋根の主屋や池を配した日本庭園など、古き佇まいを今に伝える特徴ある景観を持っています。これまでにNHK連続テレビ小説「らんまん」、TBSテレビ「ニンゲン観察バラエティモニタリング」、「太宰治物語」、テレビ朝日「仮面ライダー響鬼」、映画「鳶がクルリと」などのロケに使用されました。

修復工事

令和4年度には、茅葺屋根の葺替工事を行い、劣化した茅や破損した部材の交換を行いました。修理には茅葺職人の技が随所に用いられました。

Information

名称
穂積家住宅
(ほづみけ じゅうたく)

日立・高萩・奥久慈

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