篆刻美術館の概要
篆刻とは、印章から発展した芸術で、約500年前に中国で始まりました。篆書と呼ばれる古文字を石片や木片に刻み、朱色の印泥をつけて紙に押印し、その印影を鑑賞するという、書と彫刻が結合した工芸美術です。篆刻美術館は、古河の篆刻家・生井子華(いくい・しか)の作品を中心に、篆刻の美しさを堪能できる場所です。
展示内容
美術館では、篆刻に関する様々な展示が行われています。常設展示では、古河出身の篆刻家である生井子華の作品をはじめ、石井雙石、二世中村蘭臺など、篆刻の世界で名を馳せた篆刻家たちの作品が展示されています。また、篆刻に用いられる封泥や石印材などの展示もあり、篆刻の歴史と技術を学ぶことができます。
特別展示と企画展
篆刻美術館では、定期的に特別展示や企画展も行われています。たとえば、中国書画の収集家の鑑蔵印を展示した「林朗庵自用印展」や、著名な篆刻家の作品を集めた「園田湖城展」など、篆刻の多様な側面を紹介する展示が開催されています。また、現代の篆刻家たちの作品を集めた展示や、古河市内小中学校生や全国高校生の篆刻作品展示なども行われ、篆刻の魅力を多角的に楽しめる機会が提供されています。
篆刻体験 - 実際に篆刻を体験する機会
篆刻美術館では、篆刻を体験することも可能です。美術学習室には、篆刻に必要な用具や用材が揃っており、手軽に篆刻の魅力を体験することができます。体験は、土曜日・日曜日・祝日に開催されており、完全予約制となっています。詳細は美術館の公式サイトをご参照ください。
古河の篆刻家・生井子華について
篆刻美術館は、古河市出身の篆刻家・生井子華の作品を展示する施設として開館しました。生井子華は、明治37年(1904年)に古河町(現古河市)に生まれ、印章業を営む家庭で育ちました。昭和7年(1932年)には西川寧(にしかわ・やすし)に師事し、篆刻家としての道を歩み始めます。昭和24年(1949年)には、第5回日展にて特選を受賞し、その後も日展の審査員を歴任するなど、篆刻界に大きな足跡を残しました。
生井子華の略歴
- 明治37年(1904年) - 古河町に生誕。生家は印章業。
- 昭和7年(1932年) - 西川寧に師事。
- 昭和24年(1949年) - 第5回日展で特選受賞。
- 昭和31年(1956年) - 日展の審査員に就任。
- 昭和43年(1968年) - 古河市文化章を受章。
- 昭和55年(1980年) - 勲四等瑞宝章・古河市教育功労章を受章。
- 昭和56年(1981年) - 紺綬褒章を受章。
- 平成元年(1989年) - 死去。
建物の歴史と構造
篆刻美術館の建物は、大正9年(1920年)に建てられた商家の石蔵を改修したものです。美術館の立地する町通りは、江戸時代には「石町」と呼ばれ、古河宿として商家が軒を連ねていました。現在の建物は、表蔵と裏蔵から成り立っています。
表蔵と裏蔵
表蔵は、大谷石を用いた石造3階建ての構造で、独特の意匠が施された開口部が特徴です。内部は1階が洋間、3階部分は吹抜けになっており、小屋組が見えるようになっています。裏蔵は切妻造の2階建て石蔵で、表蔵と合わせて改修され、展示棟として利用されています。これらの建物は、平成10年(1998年)に「篆刻美術館表蔵棟(旧平野家表蔵棟)」および「篆刻美術館裏蔵棟(旧平野家裏蔵棟)」として、国の登録有形文化財に登録されました。
アクセス
篆刻美術館へのアクセスは、JR東北本線(宇都宮線)古河駅西口から徒歩8分(約0.6km)、または東武日光線新古河駅東口から徒歩23分(約1.9km)となります。