本尊と寺の歴史
本尊:延命観世音菩薩
本尊は延命観世音菩薩で、平安時代前期に造られたとされる八臂(8本の手)を持つ特異な観音像です。国の重要文化財に指定されており、普段は秘仏とされていますが、毎年4月の第一日曜日に開扉されます。また、午年には特別開帳が行われます。
創建と発展
587年(用明天皇2年)、法輪独守居士によって創建されました。寺の名「雨引」は、旱魃(かんばつ)の際に雨乞いの霊験があったことから、嵯峨天皇より賜ったとされています。その後、1254年(建長6年)に宗尊親王によって再興され、さらに建武年間(1334~1338年)には足利尊氏によっても再建されました。
四季折々の自然
雨引観音の境内では、四季折々の花が楽しめます。特に有名なのは、初夏に境内を彩る紫陽花です。
- 桜の見頃:3月中旬(河津桜)、4月上旬~中旬
- 紫陽花の見頃:6月上旬~7月中旬
- 紅葉の見頃:11月下旬~12月上旬
祭りと行事
マダラ鬼神祭(毎年4月第2日曜日)
雨引山楽法寺の奇祭で、寺が兵火で焼失した際に「マダラ鬼神」が現れ、多くの鬼を使って寺を再建したという伝説に由来しています。本堂前では鬼神が舞い、49本の矢が放たれます。この矢を拾うと家内安全・無病息災のご利益があるとされています。
あじさい祭(6月10日~7月20日)
梅雨の時期、境内は100種類・5,000株の紫陽花で埋め尽くされます。特に珍しい品種として「雨引の聖(あまびきのひじり)」があり、これは当山で命名された新品種です。境内にはヤマアジサイやガクアジサイ、ハイドランジアなど様々な紫陽花が咲き誇ります。
境内の見どころ
磴道(とうどう)
文政4年(1821年)に完成した145段の大石段です。「厄除けの石段」とも呼ばれ、一段ごとに「南無観世音菩薩」と唱えながら登ると、厄が落ちるといわれています。梅雨時には石段の両側に咲く3,000株の紫陽花が訪れる人々を迎えます。
仁王門
建長6年(1254年)に宗尊親王によって建立された門で、鎌倉時代の仏師・康慶が彫刻した仁王尊が祀られています。現在の建物は天和2年(1628年)に再建されたもので、茨城県の指定文化財です。
本堂
本堂は大永6年(1526年)に真壁治幹(まかべ はるもと)によって改築され、その後天和2年(1682年)に現在の形になりました。江戸時代の名工・無関堂円哲が施した美しい彫刻が見どころの一つです。
多宝塔
天平年間(730年)、聖武天皇の皇后・光明皇后によって建立されました。現在の建物は1683年に再建されたものです。
延命水
用明天皇2年(588年)、法輪独守居士が本尊を背負ってこの地に登った際、本尊の袖から滴り落ちた水が泉となったと伝えられています。この水を飲むと延命長寿のご利益があるといわれ、遠方からも多くの参拝者が訪れます。
文化財
重要文化財(国指定)
- 木造観世音菩薩立像(延命観音)
- 木造観世音菩薩立像(前立ち尊)
茨城県指定有形文化財
- 本堂
- 仁王門
- 東照山王社殿
- 多宝塔
- 絹本著色 愛染明王画像
- 絹本著色 弁財天画像
- 絹本著色 十一面観音画像
- 木造 不動明王立像
- 五鈷杵(ごこしょ)
- 大般若経
アクセス
- 所在地:茨城県桜川市本木
- 最寄り駅:JR水戸線「岩瀬駅」から車で約10分
- 駐車場:あり(無料・有料)
雨引観音は、歴史と自然が織りなす癒しの空間です。特に紫陽花の美しさは圧巻で、四季折々の景色を楽しみながら参拝できます。安産・子育てのご利益があるとされるこの寺院に、ぜひ足を運んでみてください。