祭神と信仰
この神社の祭神は一言主大神(いちことぬしのおおかみ)であり、別名を事代主神(ことしろぬしのかみ)とも言います。一般には恵比須神としても知られています。一言主大神は福の神として信仰されており、商売繁盛、災厄除け、農作物の豊作、縁結び、平和の守護など、多岐にわたるご利益があるとされています。また、一言だけの願い事でも叶えてもらえるという信仰があり、特に非常時には家族が神社を訪れて祈願することが多いと伝えられています。この神社は、千葉県や東京都方面からも多くの信者が訪れることで知られています。
境内社
一言主神社の境内には、いくつかの境内社が祀られています。『茨城県神社写真帳』によれば、天満神社(菅原道真)、白山神社(木花咲耶姫命)、香取神社(経津主神)、稲荷神社(保食命)の4社が記録されています。しかし、現在では香取神社と稲荷神社が合祀され、香取社・稲荷社として祀られています。
また、現在の境内社には以下の4つがあります:
- 大黒社(大国主命)
- 香取社・稲荷社(宇迦之御魂大神、経津主大神)
- 縁結社
- 合社(三峯神社を始めとする13社)
特に合社は、明治42年に旧菅生村にあった13社(いずれも旧無格社)を合祀したもので、これにより一言主神社の神威がさらに強固なものとなりました。
合社の神々
合社に祀られている13社の神々は以下の通りです:
- 三峯神社(日本武尊)
- 愛宕神社(軻遇突智命)
- 八幡神社(誉田別尊)
- 三王神社(大山祇命)
- 妙見神社(月読命)
- 天神社(菅原道真)
- 道祖神社(猿田彦命)
- 別雷神社(別雷命)
- 八坂神社(速須佐之男命)
- 大日孁貴神社(大日孁貴命)
- 白髪神社(猿田彦命)
- 浅間神社(木花咲耶姫命)
- 厳島神社(市杵島姫命)
歴史
創建と発展
一言主神社の創建は平安時代の大同4年11月13日(809年12月23日)に遡ります。この時、大和国葛上郡の葛城一言主神社(現在の奈良県御所市)から一言主神を迎えたことが始まりとされています。創建当時の社地は、現在の社地の西方にあり、怪光と共に雪中から竹の子が生え、三岐の竹になったという伝承があります。この伝承により「三竹山一言主神社」とも呼ばれることがあります。
室町時代の長禄3年4月(1459年)には、荒廃していた社殿を平将門の子孫である相馬弾正胤広が再建しました。その後、戦国時代の天文19年(1550年)には兵乱で拝殿が損壊し、さらに永禄年間には半焼しています。
江戸時代には万治2年(1659年)頃から葛城流からくり綱火(大塚戸の綱火)が始まり、元禄13年正月13日(1700年3月3日)には本殿が大規模修理されています。明治時代には、神仏分離令により善光寺が廃寺となり、当時の僧が初代神官となりました。その後も明治42年(1909年)には神社整理により13社を合併し、現在の形となっています。
境内の見どころ
一言主神社の境内は約2,800坪(約0.92ha)と広大で、拡張された部分のほとんどは駐車場として利用されています。境内には信仰者から寄進された常夜灯や鳥居、玉垣が見られます。
本殿と拝殿
本殿は一間社流造で屋根は銅板葺(檜皮葺風)で、もともとは茅葺でした。現在の本殿は、1700年に再建されたもので、昭和15年(1940年)には屋根の葺き替えが行われ、昭和45年(1970年)には銅板葺に更新されています。本殿は市の指定文化財として1984年3月15日に指定されています。
拝殿も明治100年記念事業として昭和45年に増改築されており、参集殿や結婚式場も1970年代に新築されています。
大塚戸のムクノキ
境内には樹齢500年を誇る「大塚戸のムクノキ」があります。このムクノキは市指定の天然記念物として1981年12月10日に指定されており、神社の象徴ともいえる存在です。
三岐の竹
また、神社の縁起に由来する「三岐の竹」も有名です。この竹は3本に枝分かれしており、かつてこの地に突如として出現し、神社を建てるよう村人に告げたと言われています。
年間行事
一言主神社では年間を通じてさまざまな祭事が行われています。特に9月13日の例大祭は大変有名で、「花火祭り」としても親しまれています。この祭りでは、操り人形と仕掛け花火を組み合わせた民俗芸能「大塚戸の綱火(葛城流からくり綱火)」が奉納され、茨城県の指定無形民俗文化財として認定されています。その他にも、元旦祭、春季祭、菊花祭、新嘗祭など、四季折々の祭事が行われ、多くの参拝者が訪れます。
一言主信仰と講社
一言主神社は近代以降、特に著名な神社として知られ、秋の例大祭や神威が広く伝えられています。過去には徴兵検査で不合格になったり、病気が全快したりしたとの評判が立ち、茨城県内外から多くの参拝者が訪れるようになりました。また、1960年代後半から1970年代中期にかけては、一言主神社を崇拝する講社が各地に結成され、例大祭にはバス500台が集まるほどの盛況を見せました。
現在も、茨城県や千葉県、東京都などに講社が存在し、例大祭の際には講員たちが昇殿祈願を行います。また、個人参拝者も多く、年間を通じて全国から多くの人々が訪れています。
ミツバチ専用水飲み場
夏場には、手水舎に集まるミツバチのために、神社はミツバチ専用の水飲み場を設置しています。この水飲み場は、竹を割った器に苔や小石を敷き詰め、ミツバチが溺れないように工夫されています。また、神社の境内を模したミニチュアのように作られており、参拝者からは「微笑ましい」「癒される」と好評を得ています。