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椎名家住宅

(しいなけ じゅうたく)

江戸時代の暮らしを物語る、東日本最古の民家

茨城県かすみがうら市にある椎名家住宅は、茅葺き寄棟造りの建造物で、国指定重要文化財の民家です。桁行15.3メートル、梁間9.6メートルあり、江戸時代中期に建てられたことが明らかになっており、東日本最古の民家として知られています。

建物の構造と特徴

建物は南向きに建てられており、西側に土間、東側に部屋を配置しています。間取りは広間型で、土間に面して板敷きの広間があり、この広間を中心に部屋が配置されています。広間の中央には上屋柱が独立柱として立っており、伝統的な民家の特徴である曲がり材を用いた梁組が見られます。また、主要な柱は蛤刃の手斧仕上げであり、仕切り戸の板には槍鉋が使用されているなど、古い技法が随所に見られます。

広間型民家の典型

椎名家住宅は、千葉県北部から茨城県南部にかけて分布する「広間型民家」の典型として知られています。広間前寄り中央には上屋柱が立ち、広間の後部には建具を立てていないため、広い空間が広がっています。また、広間の後部にはいろりが切ってあり、ここが日常生活の場となっていました。このような間取りや空間の使い方は、当時の生活様式をよく反映しています。

椎名家の歴史

椎名家は、寛永(1620年代)以前からこの地に住む旧家であり、代々「茂右衛門」の名を襲名し、加茂村の村役を務めてきました。この地域は茨城県南部の代表的な民家形式が多く見られる地域であり、椎名家住宅もその一例です。昭和45・46年に行われた解体修理工事では、当時の姿に復元され、今日に至っています。修理の際、差鴨居の柄から「延宝2年(1674年)」の墨書銘が発見されたことで、1674年の建築であることが判明し、東日本最古の民家として歴史的価値が明らかになりました。現在では、国指定重要文化財として保存されており、建築当時の姿を今に伝えています。

霞ヶ浦周辺に見る民家の特徴

椎名家住宅は、霞ヶ浦周辺に多く見られる民家の形式を反映しています。茅葺き屋根や寄棟造りといった特徴は、この地域独特のものであり、茨城県中部の住宅とは異なる形式を持っています。

茅葺き屋根と寄棟造りの美しさ

椎名家住宅の茅葺き屋根は、自然素材を用いた伝統的な技術によって作られており、その美しさは時を経てもなお、訪れる人々を魅了し続けています。また、寄棟造りの建物は、強風や雪に強い構造であり、地域の気候に適した設計となっています。これらの特徴は、東関東地方における民家建築の一典型として高く評価されています。

Information

名称
椎名家住宅
(しいなけ じゅうたく)

鹿嶋・霞ヶ浦

茨城県