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西蓮寺

(さいれんじ)

常陸の高野山、大銀杏が彩る古刹

茨城県行方市にある西蓮寺は、天台宗の古刹で、「常陸の高野山」とも呼ばれています。山号は尸羅度山(しらどさん)、院号は曼珠院(まんじゅいん)と称され、本尊は薬師如来が祀られています。延暦元年(782年)の創建と伝えられ、数多くの文化財を有しています。

特に、国指定重要文化財の仁王門と相輪橖、茨城県指定天然記念物の樹齢1000年を超える2本の大イチョウの巨木が有名です。境内の面積は約1万6000平方メートルに及び、大イチョウに加え、サクラ、スギ、シイの巨木が生い茂り、自然の美しさが境内を彩っています。

西蓮寺の歴史

創建と発展

西蓮寺の創建は、延暦元年(782年)に遡ります。この古刹は、桓武天皇の勅願により天台宗の僧、最澄の弟子である最仙(さいせん)によって建立されたと伝えられています。最仙上人は、現在の茨城県筑西市にあたる常陸国関城の出身で、中国に渡って修行を積み、帰国後は常陸国で天台宗の布教に尽力しました。

中世から近世の隆盛

中世から近世にかけて、西蓮寺は天台宗の中心的な寺院として隆盛を極めました。鎌倉時代中期には、比叡山の無動寺から慶弁阿闍梨(けいべんあじゃり)が来て七堂伽藍を造営し、さらに京都の曼殊院(まんじゅいん)の門跡である忠尋大僧正が、乱を避けてこの西蓮寺に逃れたと伝えられています。その際、曼殊院の額を山門に掲げたとされています。

重要文化財の指定と保存

西蓮寺の山門(仁王門)は、1543年(天文12年)に楼門として建てられ、その後寛政2年(1790年)に山門に造り替えられました。この仁王門は国の重要文化財に指定されており、その歴史的価値は高く評価されています。また、境内に建つ相輪橖は、1287年(弘安10年)に元寇の役の勝利を記念して建立されたもので、比叡山延暦寺や日光輪王寺の相輪橖と並び称される貴重な建造物です。

境内の自然と文化財

樹齢1000年以上の大イチョウ

西蓮寺の境内には、樹齢1000年以上とされる2本の大イチョウがそびえ立っています。これらのイチョウは、最仙上人が植えたと伝えられ、長い歴史を刻んできました。1号株は、幹囲約6メートル、樹高約25メートルの雄木で、1883年(明治16年)の火災で幹が焼けましたが、現在も旺盛な樹勢を保っています。この木の根元には子安観音が祀られています。

2号株は、幹囲約8メートル、樹高約27メートルで、1917年(大正6年)の台風で幹の途中が折れましたが、その後も力強く成長を続けています。根元には尸羅度稲荷が祀られています。

黄葉と自然美の絶景

秋になると、これらの大イチョウの葉が黄金色に染まり、境内は一面が輝くような美しさに包まれます。特に11月下旬から12月上旬にかけての見頃には、多くの観光客が訪れ、その絶景に心を奪われます。黄葉の時期には、落ち葉が境内を埋め尽くし、訪れる人々に秋の訪れを感じさせます。

西蓮寺の桜と四季折々の自然

西蓮寺の境内には桜の木も植えられており、3月下旬から4月上旬にかけて見頃を迎えます。仁王門から相輪橖にかけての桜並木は、訪れる人々に春の訪れを感じさせる美しい光景を提供します。桜とイチョウの木々が織り成す四季折々の風景は、西蓮寺のもう一つの魅力です。

西蓮寺の建造物と文化財

山門(仁王門)

西蓮寺の山門である仁王門は、1543年(天文12年)に楼門として建てられ、その後江戸時代に一階建ての山門に改修されました。この仁王門は、室町時代末期の地方的特徴を残しており、国の重要文化財に指定されています。蟇股(かえるまた)や蓑束(みのづか)の形には、当時の建築様式の特徴が見られます。

相輪橖

相輪橖は、天台宗の象徴となるものであり、比叡山延暦寺や日光輪王寺の相輪橖と並び称される貴重な建造物です。高さ9.16メートルのこの相輪橖は、基壇、橖身、頭部の3つの部分から構成され、全体的に錫杖形をしています。元寇の役の戦勝を記念して建立されたこの相輪橖は、信者たちの浄財によって建てられ、その後も幾度かの修理が施されています。

薬師堂と木造薬師如来坐像

西蓮寺の本堂である薬師堂には、茨城県指定有形文化財である木造薬師如来坐像が安置されています。この坐像は高さ148.5センチメートルの一木造りで、寺伝によれば、最仙上人が自ら彫ったものと伝えられています。この薬師如来坐像は、茨城県内でも有数の古木像とされ、その彫刻には当時の特徴が色濃く残されています。

西蓮寺のその他の建造物

薬師堂と常行堂

常行堂は明治17年に建立された建物で、西蓮寺の本堂であり、薬師如来坐像が安置されています。常行堂には来迎阿弥陀如来像が安置され、9月24日から30日までの間、僧侶たちが昼夜を通して読経する「常行三昧会」が行われます。この行事は、日本で唯一の立行法要として知られています。

鐘楼と客殿

鐘楼は明治22年に建てられた重層の建造物で、毎年大晦日から元旦にかけて除夜の鐘が鳴らされます。一般の参拝者もこの鐘をつくことができ、年末年始の風物詩として親しまれています。また、客殿は法華経読謡の道場であり、法要が行われる場所です。客殿内には、常行三昧会の木目込人形や籠行列で使用される籠が飾られています。

西蓮寺の行事とイベント

常行三昧会の伝統

西蓮寺では、毎年9月24日から30日にかけて、常行三昧会(じょうぎょうざんまいえ)が行われます。この伝統的な行事では、西蓮寺の末寺や門徒寺の僧侶たちが集まり、7日7夜にわたって堂内を廻りながら阿弥陀経を読経します。この法要は「長者供養」とも称され、宗派を超えて多くの参拝者が新仏の供養のために訪れます。

常行三昧会の見どころ

常行三昧会の初日、中日、末日には、学頭寺の名残を彷彿とさせる籠行列が境内で行われます。また、この時期にはボランティアが植えた10万本の彼岸花が見頃を迎え、境内を鮮やかな赤色に染めます。常行三昧会は、西蓮寺の年間行事の中でも特に重要なものであり、その荘厳な雰囲気は訪れる人々に深い感動を与えます。

ふるさと山百合まつり

西蓮寺では、毎年7月中旬から下旬にかけて「ふるさと山百合まつり」が開催されます。このイベントでは、境内や周辺の里山で咲き誇る山百合を楽しむことができ、山野草の即売会も行われます。行方市民によって西蓮寺近隣の里山「山百合の里」に植えられた2万本のヤマユリが咲き誇り、多くの観光客が訪れます。

まとめ

西蓮寺は、茨城県行方市にある歴史ある天台宗の寺院で、その美しい自然環境と貴重な文化財で知られています。樹齢1000年以上の大イチョウや、国の重要文化財に指定されている仁王門と相輪橖など、多くの見どころがあります。また、年間を通じて様々な行事やイベントが開催され、多くの参拝者や観光客が訪れています。西蓮寺は、歴史と自然が調和した場所であり、その魅力を堪能するためにぜひ一度訪れてみてください。

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名称
西蓮寺
(さいれんじ)

鹿嶋・霞ヶ浦

茨城県